カモノハシの見た地球

社会人ですが、博士号取得を目指して勉強中です。気になった記事(主に地球科学系)を自身の勉強も兼ねて紹介しようと思います。あと趣味(漫画、映画、特撮)とかまとめたいです。

風の大地が面白すぎる

マンガワンというアプリで以前から友人に勧められていた「風の大地」を読んでいます。

https://www.amazon.co.jp/dp/B00COKLXXM/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 

もともとはブラック・ジャックが読みたくて入れたアプリですが、今ではすっかり風の大地専用になっています。

 

主人公、沖田圭介がプロゴルファーを目指し、そしてプロになった後の活躍を描くゴルフ漫画です。

沖田は最初は研修生として鹿沼CCに所属していましたが、自身の凄まじい努力と良き師、良き友人に恵まれ、またライバル(ものすごくイヤなやつ)と切磋琢磨の末に、わずか一年近くでプロゴルファーになります。さすがに早すぎる気もしましたが、そこは漫画ですし、沖田の師匠にあたる宇賀神さんのこともあって、そこまで気になりませんでした。

 

現在僕はアジアサーキット編を読んでいる途中です。マンガワンだと1日最大10話見るのが限界ですが、風の大地、73巻まであるんですね。途中で飽きそうです。

 

主人公は今のところ超天才ゴルファーなので、ほぼ安心して見ていますが、やはりプロの世界を描くということで研修生編ではプロの夢を破れて第二の人生を歩む人達も出てきます。

 

沖田の師匠である宇賀神正行もかつてはプロゴルファーを目指していましたが、結局断念して鹿沼CCで料理人をしていました。この宇賀神さんが本当に良い師匠で、沖田も困ったときは宇賀神さんのアドバイスを参考にして、技術的にも精神的にも成長している様子でした。そして宇賀神さん自身が誰よりも沖田の成長を喜んでおり、理想の兄貴分という感じでした。

 

研究者の世界に憧れて大学院に通っている僕ですが、今は研究職につくのも厳しいようですし自分はこの先どうなるんだろうとつい考えてしまいます。仮に第二、第三の人生を歩むことになったとしても、自分の夢を誰かに託して、その人の活躍を心から喜べるような、そんな人になりたいと思いました。

 

謎展開(雷イップスとか)や謎ポエムも挟まれていてネタとしても面白いですが、それを抜きにしても単純に漫画として面白いです。まだまだ読了まで長いですが、楽しみながら読んでいきたいと思います。

 

絶滅を引き起こす気候変動

劇的な温度変動と環境の悪化が約2億5000万年前のペルム紀末大絶滅を引き起こした可能性があり、そしてそれはシベリアントラップの火山噴火によって引き起こされた可能性を、Nature Geoscienceで報告されていました。

 

https://www.nature.com/articles/s41561-018-0264-8#article-info

 

大規模な火山噴火が急激な気候変動を引き起こす可能性があることは割りと昔から言われていますね。私たち人類、ホモ・サピエンスが経験した最も大きな火山噴火は、約7万4000年前のトバ火山噴火です。

この噴火によって引き起こされた急激な寒冷化が、当時数百万人いた人類を1万人以下に激減させたと言われていますが、実は急激な寒冷化を示す地質的証拠は見つかっていません。

もちろん生物絶滅を引き起こすような大規模な火山噴火はテクトニックな時間スケールで引き起こされるので、明日明後日突然起こることはほぼ間違いなくありえませんが、どの程度の噴火でどのくらいの規模の気候変動が起こるのか、今後の研究で明らかにされることを期待したいです。

不均衡な顔が洞穴内の目のない魚の道案内を助けている?

光の届かない洞穴内には、目が退化した魚が存在しています。その一種であるAstyanax mexicanusは、目が退化して非対称となった自身の顔を泳ぐための方向決定に利用している可能性が明らかにされました(

https://www.sciencemag.org/news/2019/01/lopsided-face-helps-eyeless-cave-fish-navigate

)。

初めて知りましたが、洞穴内の生物は顔や形が左右非対称のようです。例えば、洞穴内の魚は片方の目が大きい傾向があり、カマドウマは左右の触覚の長さが違うようです。記事で紹介されている研究者らはこの左右非対称の顔がどのように彼らの生活に役立っているかを調べました。

研究者らはAstyanax mexicanusの頭をコンピューター断層撮影することで、この種の顔が左に傾いており、右顔の面積が相対的に大きい傾向を明らかにしました。また、他の調査では、これらの種は洞窟の壁の右側に沿って漂う傾向を示しました。これらの結果から、顔のより大きい側面を暗闇の中で方向を感じるために使っている可能性を示したようです。

次に研究者らは、魚の頭についている感丘を数えました。この感丘は水流や振動を検知することができます。その結果、目の見えない魚は目の見える魚に比べて感丘の数が多く、また大きいことが分かりました。

 

この違いを遺伝的に明らかにするために、研究者らは洞穴魚と普通の魚を飼育しました。その結果、感丘の多い魚は普通の魚に比べてMn1と呼ばれる遺伝子の発現度が高いことが分かりました。マウス実験では、Mn1の多いマウスは顔面骨の異常を引きおこします。魚では、通常骨が歪んで斜視になっている場所に余分な感丘が現れます。このことから、感丘が骨を異常に発達させる原因となっている可能性があります。

 

この示唆には魚だけでなく、マウスや人間さえも含まれる可能性があります。研究者らは感丘と骨の異常発達、及び行動との関連性を調べることで、感覚と骨の細胞の発達と頭蓋骨異常の関連性の解明を期待しています。

 

 

氷河の崩壊はアジアの水供給にとって脅威である

「サード・ポール」という言葉を初めて聞きました。北極と南極の2つの極に続いて最も氷や雪を多く保有している場所を意味しているようです(

https://www.nature.com/articles/d41586-018-07838-4

)。この記事では具体的に、ヒマラヤ ー ヒンズークシ山脈及びチベット高原周辺を指しています。この地域は100,000 cm2の氷河を有しており、さらにその融水はインダス川ブラマプトラ川ガンジス川黄河揚子江を含む10の巨大河川に流れ込んで、世界の1/5の人口の生活を支えています。なので、この地域の氷河が無くなってしまうととても大変だという訳です。

 

地球温暖化によって、過去50年間でヒマラヤ及びチベット高原の氷河は減少してきました。一方で融水の増加によって湖は拡がりつつあります(Zhang et al., 2017)。また、最近の研究で現在の河川流量のピーク時期が30年前よりも早いことを明らかにしているように(Huss et al., 2018)、この数十年で気候のパターンは徐々に変化しています。また、ヒマラヤ周辺地域の降水分布パターンはモンスーンや偏西風といった環境システムの影響を受けるため複雑です。また地形も複雑なので、氷河の分布パターンの予測に不可欠である降水パターンや温度の変化を理解することは非常に困難です。現在、ヒマラヤ地域の巨大河川や氷河周辺には、気温、降水量、湿度、気圧、風速を観測する10点の観測ステーションが設置されていますが、2019年中に27点の観測ステーションを追加で設置するようです。

 

数十年スケールの気候変動は、実感こそ難しいのですが、間違いなく私たちの生活に影響してきます。このような気候変動に対する関心がもっともっと高まっていってほしいです。

 

 

熱帯で二酸化炭素を吸着している山々の隆起は、世界的な気候にとっての温度調節器となっている?

年末になってようやく寒くなってきましたね。地球史の中では、様々な時間スケールで温暖ー寒冷化を繰り返す気候変動がありました。特に百万年から1億年オーダーの温暖ー寒冷サイクルは、生物の絶滅や発生に関与した可能性があります。その原因はまだまだ明らかにされていませんが、国際科学雑誌Scienceでは、インドネシアの山々の隆起が、世界的な温暖ー寒冷サイクルのスイッチとなっている可能性を報告しています(

Rise of carbon dioxide–absorbing mountains in tropics may set thermostat for global climate | Science | AAAS

)。

 

インドネシア及び近隣のパプアニューギニアは、海底プレートの沈み込みによって形成された帯状の火山列島です。ちょうど日本の東北–関東地域の様なイメージですね。そのため山々の多くは古代の火山岩によって形成されています。これらの岩石は熱帯域の季節的な降雨に打ちつけられ、大気中の二酸化炭素と激しく反応します。例えば、火山岩の中に一般的に存在する長石(CaAl2Si2O6)は大気中の二酸化炭素と反応してカオリナイト(Al2Si2O6)と呼ばれる粘土鉱物になります。

 

CaAl2SiO6 + 2CO2 + 3H2O → Ca2+ + 2HCO3- + Al2Si2O6

 

これは大気中の二酸化炭素を除去する反応として知られています。インドネシアでは鉱物と二酸化炭素が激しく反応しているので、世界の陸上面積のうちインドネシアはわずか2%しか占めていませんが、世界の陸域が吸収している二酸化炭素濃度のうち、インドネシアでは10%も吸収されている様です。

 

この記事では、過去5億年間の中で顕著に寒冷化した時期とインドネシアの様な熱帯域の山々を形成する大陸衝突の時期が一致していることから、もし地球に温暖ー寒冷を切り替えるスイッチがあるならば、それはインドネシアの山々の隆起や発生ではないかと結論づけているようです。また、火山の形成は同時に噴火による二酸化炭素の排出を伴いますが、それでも風化による二酸化炭素の除去の方が多かったことを主張しています。

 

主張そのものが正しいかは今後の検討次第でしょう。しかし、熱帯域では噴火で大気中に出される二酸化炭素よりも、風化で除去される二酸化炭素の方が、長期的な時間スケールでは多くなる可能性があると分かったことは今後の地球史研究における新たな一歩であると思われます。

NASAが新年に太陽系外へ訪れることを知るための5つのこと

NASA無人探査機ニューホライゾンズは、来年の1/1に遠く太陽系外の、原始的な岩体を通り過ぎることを科学雑誌Natureが報道していました(

https://www.nature.com/articles/d41586-018-07827-7

)。自分の興味と少し外れていますが、面白そうだったのでまとめてみました。

この岩体は地球から約65億 km離れており、これまでに訪れた最も遠い距離の記録を上回ることになります。

接近目標の岩体は、MU69と呼ばれています。探査機は秒速14 kmで前進し、わずかな時間のみ接近しますが、その後数時間後もしくは数日後に接近時の写真が地球に送られてくるようです。

 

MU69はこれまでに訪れた最も原始的な物体と考えられており、45億年以上前に合体し太陽系を形成したガスと塵の円盤について、多くのことが明らかにされると考えられています。Natureの記事では、このランデブーに関する5つのことが紹介されていました。

 

1. MU69は冥王星より遠くに位置している

MU69は冥王星と同様に、エッジワース・カイパーベルト(

https://ja.wikipedia.org/wiki/エッジワース・カイパーベルト

)に存在しています。しかし、冥王星は直径2370 kmと大きな準惑星であり、造山活動が行えるような内部地質学的エンジンを持つのに充分な大きさですが、MU69は直径30 km程度の小さな準惑星です。そのため、地質学的な原型を留めている可能性があります(もしかしたら隕石衝突などでできたものかもしれませんが・・・)。

 

2. MU69はどのような見た目か分かる

恐らく暗く、赤く、凸凹でしょうが、さらにその全景が分かると思われます。

MU69は非常に遠い場所に位置しているので、2014年の発見はハッブル宇宙望遠鏡でさえも非常に困難なものでした。

今まで、2017年に3回、2018年に1回、MU69がより遠い星の前を通った時の影を観測することで、MU69の大まかな形を明らかにしてきました。落花生のような形と考えられていましたが、二つの岩体が重なっていても同じような影になるので、はっきりと明らかにされていませんでした。

 

3. 太陽系の形成ついて多くのことが明らかにされると思われる

冥王星は何かと衝突したことで星の軌道が太陽系の軌道と比べて傾いていますが、MU69はほぼ元の軌道のまま太陽を周回しているようです。もし本当なら、45億年以上前にMU69が形成された時から今までずっと太陽系外の非常に冷たい空間に位置していたことになります。MU69を含めたエッジワース・カイパーベルトの岩体は、元は惑星を形成したと考えられている太陽周辺の物質の残渣物と考えられています。MU69に注目することで、エッジワース・カイパーベルトの岩体についてさらに理解できると思われます。

 

4. 到着はとても困難だった・・・

冥王星までの操縦は大変困難でしたが、それより16億 kmも遠くまでの操縦は先例のないことでした。これまでニューホライゾンズは遠い星の写真を取り、MU69が背景に対してどのように動くかを観測することで、MU69の軌道を調べていました。現在ニューホライゾンズ管制官は、MU69の表面から約3500 km上空を飛ぶ経路で調査できるように指令を打ち込んでいるようです。

 

5. 接近通過日数はわずかである

これらの調査はMU69に接近通過するわずかな時間で行われますが、だからと言ってすぐに様々な結果が分かるわけではありません。

ニューホライゾンズはMU69にアメリ東海岸時間の1/1のAM 12:33にに最も近づきます。その後地球まで情報を光速で送るのに6時間以上かかります。

最初の接近した時の鮮明な写真は次の日の朝です。

その時にようやく、今まで調べられたことのない、最も遠い世界について初めて垣間見ることができるでしょう。

 

楽しみですね。また続報を待ちたいと思います。