カモノハシの見た地球

社会人ですが、博士号取得を目指して勉強中です。気になった記事(主に地球科学系)を自身の勉強も兼ねて紹介しようと思います。あと趣味(漫画、映画、特撮)とかまとめたいです。

氷河の崩壊はアジアの水供給にとって脅威である

「サード・ポール」という言葉を初めて聞きました。北極と南極の2つの極に続いて最も氷や雪を多く保有している場所を意味しているようです(

https://www.nature.com/articles/d41586-018-07838-4

)。この記事では具体的に、ヒマラヤ ー ヒンズークシ山脈及びチベット高原周辺を指しています。この地域は100,000 cm2の氷河を有しており、さらにその融水はインダス川ブラマプトラ川ガンジス川黄河揚子江を含む10の巨大河川に流れ込んで、世界の1/5の人口の生活を支えています。なので、この地域の氷河が無くなってしまうととても大変だという訳です。

 

地球温暖化によって、過去50年間でヒマラヤ及びチベット高原の氷河は減少してきました。一方で融水の増加によって湖は拡がりつつあります(Zhang et al., 2017)。また、最近の研究で現在の河川流量のピーク時期が30年前よりも早いことを明らかにしているように(Huss et al., 2018)、この数十年で気候のパターンは徐々に変化しています。また、ヒマラヤ周辺地域の降水分布パターンはモンスーンや偏西風といった環境システムの影響を受けるため複雑です。また地形も複雑なので、氷河の分布パターンの予測に不可欠である降水パターンや温度の変化を理解することは非常に困難です。現在、ヒマラヤ地域の巨大河川や氷河周辺には、気温、降水量、湿度、気圧、風速を観測する10点の観測ステーションが設置されていますが、2019年中に27点の観測ステーションを追加で設置するようです。

 

数十年スケールの気候変動は、実感こそ難しいのですが、間違いなく私たちの生活に影響してきます。このような気候変動に対する関心がもっともっと高まっていってほしいです。