カモノハシの見た地球

社会人ですが、博士号取得を目指して勉強中です。気になった記事(主に地球科学系)を自身の勉強も兼ねて紹介しようと思います。あと趣味(漫画、映画、特撮)とかまとめたいです。

熱帯で二酸化炭素を吸着している山々の隆起は、世界的な気候にとっての温度調節器となっている?

年末になってようやく寒くなってきましたね。地球史の中では、様々な時間スケールで温暖ー寒冷化を繰り返す気候変動がありました。特に百万年から1億年オーダーの温暖ー寒冷サイクルは、生物の絶滅や発生に関与した可能性があります。その原因はまだまだ明らかにされていませんが、国際科学雑誌Scienceでは、インドネシアの山々の隆起が、世界的な温暖ー寒冷サイクルのスイッチとなっている可能性を報告しています(

Rise of carbon dioxide–absorbing mountains in tropics may set thermostat for global climate | Science | AAAS

)。

 

インドネシア及び近隣のパプアニューギニアは、海底プレートの沈み込みによって形成された帯状の火山列島です。ちょうど日本の東北–関東地域の様なイメージですね。そのため山々の多くは古代の火山岩によって形成されています。これらの岩石は熱帯域の季節的な降雨に打ちつけられ、大気中の二酸化炭素と激しく反応します。例えば、火山岩の中に一般的に存在する長石(CaAl2Si2O6)は大気中の二酸化炭素と反応してカオリナイト(Al2Si2O6)と呼ばれる粘土鉱物になります。

 

CaAl2SiO6 + 2CO2 + 3H2O → Ca2+ + 2HCO3- + Al2Si2O6

 

これは大気中の二酸化炭素を除去する反応として知られています。インドネシアでは鉱物と二酸化炭素が激しく反応しているので、世界の陸上面積のうちインドネシアはわずか2%しか占めていませんが、世界の陸域が吸収している二酸化炭素濃度のうち、インドネシアでは10%も吸収されている様です。

 

この記事では、過去5億年間の中で顕著に寒冷化した時期とインドネシアの様な熱帯域の山々を形成する大陸衝突の時期が一致していることから、もし地球に温暖ー寒冷を切り替えるスイッチがあるならば、それはインドネシアの山々の隆起や発生ではないかと結論づけているようです。また、火山の形成は同時に噴火による二酸化炭素の排出を伴いますが、それでも風化による二酸化炭素の除去の方が多かったことを主張しています。

 

主張そのものが正しいかは今後の検討次第でしょう。しかし、熱帯域では噴火で大気中に出される二酸化炭素よりも、風化で除去される二酸化炭素の方が、長期的な時間スケールでは多くなる可能性があると分かったことは今後の地球史研究における新たな一歩であると思われます。